回帰線 / 尾崎豊

 

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[回帰線 / 尾崎豊] (1985)

 

 

尾崎豊のセカンド・アルバム。尾崎はこの作品でチャート初登場1位を獲得。

なにせ15年も前の出来事なので記憶もおぼろげですが、このアルバムとの出会いは就学前。母が居間で偶然流していたのが5曲目「卒業」で、この曲にとてつもない衝撃を受けたことを覚えています。4,5歳のボウズにとっては(もちろん星新一筒井康隆にも出会う前)あまりにエキセントリックな歌詞、とてもじゃないけど余裕は感じられない叫びのような歌声。もちろん当時そんな言葉は知らなかったけど、まさに”刹那性“を強く感じさせる曲でした。どう考えても今は受け入れられないオーバーなアレンジやナルシシスティックな姿勢も、何も知らない当時だったからこそストンと入ったのでしょう。こうして、僕は彼のその楽曲たちに引きこまれてゆくのです。

 

「回帰線」はクラシックに傾倒していた小学校低学年の僕にとっては、初めて「歌詞を意識して聴く」という経験をもたらしてくれたアルバムで、また「卒業」はそのあと数年の人生の指針ともなる曲でした。よくもまあ学童保育の保護者会の打ち上げで「夜の校舎 窓ガラス壊してまわった」なんて熱唱できたなあといまは思うけど、その社会性のなさも尾崎の歌詞を前にすると妙に共感するものがあったのかもしれませんね。

 

 

ノリノリのロックン・ロールナンバーである「Scrambling Rock'n'Roll」から始まり、”鉄喰らいのすヽめ“「Bow!」、尾崎の緩急の美学を象徴する「ダンスホール」、若さ・反骨・道徳観の集大成「卒業」などの曲を経て、「シェリー」に終わる。崩されてはならないこの一本線がまさにTROPIC OF GRADUATION、卒業を以って最高度となる思春期の輝きだったんだろうな、と僕は思っています。

 

 逆張り逆張りを重ねていた小学校高学年・中学生時代、このアルバムは良くも悪くもそんな僕を肯定してくれる数少ない存在でした。理由なき反抗に理由を与えてくれました。あのとき回帰線を聴いていなかったら・・・ちょっと想像がつかない。

 

 

そのうち尾崎の歌詞を模倣しているだけの自分に嫌気がさして、このアルバムから距離を置く時期が僕にやってくるのですが、それはちょっと後のお話。 

 

 

 

 

 

回帰線

回帰線